Papers2で使える3つの小技 013

今日はちょっと気を抜いてPapers2を使う上で便利な小技を3つほど紹介したいと思う。 

フルスクリーンで読みつつ辞書を同じ画面に表示

これは私がいつも使っている小技である。OSがLionの頃からフルスクリーンでアプリを使うことが可能になり、それはMountain Lionにも引き継がれ、うまく活用している人も多いだろう。Papersももちろん他のアプリと同様にフルスクリーンで利用することができる。
 
しかしあえてここではそのフルスクリーン機能は使わない。これを使うと辞書を開いたときに別のデスクトップに移動してしまい、行き来が煩雑になるからである。
 
ではどうするか。
MacのPapersで論文を読む際は、アプリ自体はフルスクリーン化せずに普通に開いておいて、左下のRead Fullscreenをクリックする。これで非常に快適に読み進めることができる。分からない単語が出てきたら、それを選択し、辞書を引けば良い。同じ画面上に辞書が登場し、簡単に意味を調べることができるだろう。
この時により辞書を使いやすくするためにPopClipなるアプリをインストールしておくことをオススメする。これは選択した文字列に対してどのようなアクションを起こすのかをクリックのみで選択できるようになるアプリである。オプションで辞書にチェックを入れておけば手間をかけずにスムーズに辞書を引くことが可能になる。
 
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メールで論文をワンクリックで送付する

またRead Fullscreenの3つ隣にはEmailのアイコンがある。論文を選択した状態でこれをクリックするだけで、知り合いに簡単に論文と文献情報を送ることができる。あまりに重たい論文には向かない方法ではあるし、Mail.appユーザーに限られる方法ではあるが、知っておいてもいいだろう。例えばゼミや勉強に先立って参加者同士で論文をシェアする際などにはおおいに有効であると思う。非常に簡単である。
 
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あらゆるファイルタイプを管理可能

またPapersではPDFに限らず多くのファイルタイプを管理することができる。テキストファイルやパワーポイントやイメージファイルなど研究活動にはかかせないファイルを論文とともに一括管理してみるのも良いかもしれない。
私自身は現時点ではこれらのファイルはrevision機能があるDropboxに全て入れているが、もう編集しないファイルや完了したプロジェクトに関するものなどはPapersで一括管理してもよいかなと考えている。
 
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という感じで今日はPapersの小技を紹介してみた。
かなりお気に入りのアプリなので、機会をみてまた紹介したいと思うが、今日はこれまで。 

読んだ論文内容を発表する際に求められている3つのこと 012

 

ゼミにおける論文輪読とその発表

 

多くの大学では三年生の頃からゼミというものが始まる。ゼミの内容は、それを受け持つ教授や出席する学生によって様々だが、多くは学生側からのなんらかの研究や勉強の成果発表という形を取るだろう。その中でもとくに多いのが論文輪読や論文のまとめ発表だと思う。

そこで今回は私自身が多く経験してきたゼミにおける論文発表の際に何が求められているのかを説明したい。

 

「論文を読む → 内容を発表」という機会は多い

ゼミや勉強会において、何らかのテキストを用意し、それを担当者を決めて発表するというスタイルは非常に多い。大きくわけるとその中では輪読と論文発表というふたつのスタイルがある。輪読は分厚い単行本の章ごとに担当者を決めて、何週間かにわたってそれぞれの賞の内容を発表してもらうという形である。いわゆる回し読みである。もうひとつは何らかの大きなテーマを決めて、それに沿った論文を集めてきて(集めるのは教授側がやることも多い)、それぞれの論文を一人が読んで、その内容を発表してもらうというものだ。

統計をとったわけではないが、個人的な印象でいえば多くの文系ではこれらのようなスタイルのゼミが圧倒的多数だと思う。

 

ゼミ発表時に学生がやるべきこと

基本的に学生側がやるべき内容はどちらでも一緒である。

  1. テキストを理解する。
  2. その内容を建設的な形で解説する。

端的にいえばこの二点に集約される。しかしこれがなかなか難しい。私も学部生の頃のレジュメを見れば赤面せずにはいられない。仕方あるまい。何回も試行錯誤を繰り返して徐々にうまくなっていくしかない。

 

逆に言えば、発表の出来が悪かった場合は、その理由は理解が乏しいか、解説の方法が悪かったか、もしくはその両方ということになる。テキストの読み方については前に解説したので、ここでは②の建設的な形での解説について述べたい。

 

多くの場合、発表者はレジュメを作ることになるだろう。レジュメとはフランス語で要約という意味だが、日本のゼミではもっと広い意味で使われており、発表時に参加者全員に配付するハンドアウトを意味する場合が多い。このレジュメの作り方についてはいつか触れたいと考えているが、ここでは深く立ち入らない。

 

 

建設的なゼミ発表のために

 

では、そのレジュメに書くべき発表内容とは何か。

ここで示すべき内容は大きく分けると3点挙げられる。

  1. テキストの概略
  2. テキスト内の重要ポイント
  3. テキストの位置付け

 

それぞれ見ていこう。

テキストの概略

これは簡単である。要するにテキストの内容をコンパクトにまとめれば良いのである。

導入部分に何が書いてあり、分析部分には何が書いてあり、という具合で内容を拾っていけば完成するだろう。論文の構造を理解した者がまとめれば誰がやってもだいたい同じ内容になるだろう。この部分はそれで良い。要領よくまとめればそれで良いのだ。

 

テキスト内の重要ポイント

ここからが発表者の腕の見せ所となる。この論文における重要なポイントは何かを見抜き、提示する必要がある。

論文内には著者が最も主張したいメッセージが込められている。これは絶対に見逃してはいけない。しかしながら、読み方によっては他にも重要なポイントが見つかるかもしれない。そのような点は、自分なりの読み方で見つけたものであり、自分の問題意識にとって重要なものとなる。こういう点を聴衆と共有できるかどうかは、発表の出来に密接に関わってくる。

あまり論文を読み慣れていない者の発表を聴くと、論文のメッセージに直接関係がなく、かつとても重要とは思えない枝葉のような箇所を気にしているような印象を受けることが多い。そのポイントをわざわざ取り上げる際は、それがどのような重要性をもつのかを説得的に提示する必要があるだろう。うまくいけば誰もが気づかなかった論文の重要点や問題点を指摘できるかもしれない。

 

テキストの位置付け

概略とポイントが説明できれば、この論文自体の説明はおおよそ完了したと言える。

しかしその論文をどう評価するかという重大な義務が発表者には残っていることを忘れてはいけない。つまりどのような文脈にその論文を位置づけて理解するのかということである。「発表された時期と当時の研究事情からみた本論文の革新性」のような位置付けもありえるだろうし、「他の領域でやられていることを持ってきた二番煎じ」という理解もできるだろう。「最新の社会理論を効果的に援用しており他の研究にも応用可能」という評価もあるだろうし、「他の研究者と同じ資料を用いて違う解釈を引き出しているが説得力には乏しい」という批判もありえるだろう。ここにこそ発表者のオリジナリティが存分に発揮されるのである。

他の研究との比較を行って、相対的にその論文をみたときにどのように見えるかを効果的に提示する必要がある。この作業をもって始めて論文の発表が可能となるのである。

この位置付け作業がない発表を聴かされると、発表者がこの論文をどう理解して、評価しているのかがよく分からない。もちろん位置付けの仕方が本質とはズレてしまうこともあるだろう。そのような場合は教授や先輩が注意してくれるだろうし、分からないなら訊けばよい。

 

 

おわりに

 

「この論文読んできて発表してよ」と言われる機会は学生にはよくあるだろう。その際に求められていることは国語のテストのような解答ではない。「導入にはこんなことが書いていて、結論にはこんなことが書いています」という発表は、単にまとめただけである。誰でもできる。

 

その論文において著者が最も主張したかったことは何か、発表者が最も興味を持ったポイントは何かを提示する必要がある。そしてさらにどのような文脈の中でどのようにその論文を位置づけるのかを明確に示す必要があるのである。

 

単なるまとめならあなたがやる必要はない。誰がやっても同じなのだから。あなたにしかできない読み方があるはずであり、あなたにしかできない位置付け方があるはずである。私はあなたの発表ではそれを聞きたい。

 

Macで鬱陶しい広告を非表示にする簡単な方法 011

たまには普通のMacネタを。

ネットサーフィンをしていて、どうも広告が鬱陶しいことがある。私はネット上の広告をクリックしたことなど一回もなく、この広告で恩恵を受けたことも一度もない。ただただ鬱陶しいのだ。

最近は「Macの動作が遅いですか?」などと表示される広告がかなり目につくようになってきた。これを非表示にする方法はないものかと考えていたら、非常に簡単な方法があったので紹介する。

 

AdBlockでAdをBlock!

答えは簡単。Safariの拡張機能の一番人気AdBlockである。どうしてもっと早くインストールしなかったのかと本当に思う。おそらく皆さんはすでに知っていてインストールしているのだろう。全然知らなかった。これをワンクリックでインストールすれば、もう鬱陶しい広告に悩まされることもないのだ。

Facebookの画面にもこれまでは右側カラムに広告が常に並んでいたが、これをインストールしてからは一切表示されなくなった。ありがとうAdBlock!

ちなみにインストールが終わると、こんな茶目っ気たっぷりの画面が表示される。イエイ!製作者を応援したい人は寄付をしてあげよう。寄付金とともに製作者からのコメントが変わっていくのが面白い。

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これさえ読めば大丈夫。Papers2の使い方。 010

 今日はMacで研究活動を行う際に欠かせないと個人的に思っているお気に入りアプリのうちのひとつを紹介したい。その名はPapers2

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簡単に言ってしまえば文献管理ソフトである。これからは論文は図書館でコピーするものから、ネットでダウンロードするものにどんどん変わっていくだろう。ダウンロードした論文を一つ一つ印刷してアナログで管理するのも結構だ。ただ効率やコストを考えるとパソコン上で管理した方が賢明だと私は思う。とくに先の長い若い学生ならなおさらである。

Papers2はMacを使っている研究者の間では知る人ぞ知るという位置付けなのか、ブログなどでの紹介をちらほらと見かける。なかでも「Dr.APP~医師による医療Lifehack~iPhone/iPad徹底活用」のブログでは5回に渡ってこのアプリを紹介しており、非常に参考になる(文献管理ガイド2012 最強版6〜Papers2まとめ〜)

 

本エントリーではこれらを補足して使い方を説明しつつ、私の使い方を紹介したいと思う。

ちなみに私はこのアプリをiPadとMacの両方で使っている。確かにコストは少々かかるが先行投資と思えば安いものである。iPhone版もあるものの、画面が小さく、インターフェイスも洗練されているとは言い難いので実用的ではないと私は考えている。

まずは母艦となるMacでの使い方を紹介する。

ダウンロード&インストール

まずは何はともあれダウンロードとインストール。30日間は無料トライアルが可能なので、まずは使ってみることをオススメする。気に入らなければやめれば良いし、気に入れば購入すれば良い。普通に買えば79ドルである。学生割引を使えば4割引になる。

 

論文のインポート

次は論文のインポートである。インポートする方法は様々だが、一番簡単なのはPC上にダウンロードしたPDFをアプリアイコン上へドラッグアンドドロップする方法だろう。ほかにもアプリ上のブラウザから直接インポートする方法やSafari上に表示しているPDFをそのままPapersで開く拡張機能があったりするが、ここでは詳しい説明は省く。

マッチングによる論文情報の自動入力

インポートしたPDFをすぐに確認するには、左カラムのRecent Importをクリックする。直前にインポートしたものだけを表示したり、期間を柔軟に設定できるので簡単に目当てのものを見つけられるだろう。

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Papersの文献情報の自動入力機能はかつては全く使い物にならないレベルだったが、最近のアップデートでようやく実用的なレベルになった。ほとんどの電子ジャーナルはインポートした瞬間に正しい文献情報が自動で入力されるようになっている。間違いはほぼゼロと言っていいだろう。電子ジャーナルになっていなくても雑誌の論文をスキャンしたものはMatchによって文献情報を補うことができる。

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論文のタイトルで検索をかけるのがいいだろう。一覧から適当なものをダブルクリックするだけで、正しい文献情報が入力されるようになっている。

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この際の問題は論文集のような書籍の中に論文が入っている場合である。多くの場合これらはMatchでヒットしない。したがって手打ちで文献情報を入力する必要がある。これは非常に面倒くさい。現時点では仕方なくやっているが、後のアップデートでもっとMatchの守備範囲を広げてくれることを切望している。また、日本語文献は全滅である。日本語文献はほぼ100%手打ちで文献情報を入力する必要がある。残念ながら後のアップデートで日本語を書籍・論文情報をサポートするとは考えにくい。したがって日本語文献を多く扱う人は、「手打ちなんて面倒くさいことやってられるか」と考えるか、「面倒だけど一度入力してしまえばいいだけであとは便利に使える」と考えるかであるが、そこは個人の裁量に任せたい。私の場合はほとんどが英語論文なのでわずかな日本語論文はすべて手打ちで入力した。

コレクションによる整理

Papersにおけるコレクションとは要するにタグのことである。論文を自分なりの方法で仕分けることができる。ここでのポイントは二つある。ひとつはこれはフォルダではなくタグであるため、一つの論文を複数のコレクションに割り当てることが可能となるのである。したがって、例えば一つの論文を「すぐ読むコレクション」と「A論文の参考文献コレクション」と「石器作成技術に関する文献コレクション」に割り当てることができるのである。

もうひとつのポイントはこの仕分け作業を手動だけでなく自動でも行うことができるという点である。スマートコレクションなるものを作成すれば特定の条件にそった文献がインポートされた際に、自動的にそのコレクションに入るようになる。「「2000年以降の」「タイトルにLithicという単語が使われている」文献はこのコレクションへ」といった具合である。新たにインポートされた文献しか対象にならないという問題はあるものの、うまく使えば文献整理の手間を省くことができるだろう。

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検索とフラグ機能によるアクセスコストの極小化

Papersは検索が非常に便利に使える。タイトル検索はもちろんのこと、著者名や発行年や収録媒体などあらゆる方法で検索が可能である。検索する際には検索文法を利用すると便利である。たとえばタイトル検索をかけるときは検索窓に「ti:」と書いたあとに目当てのタイトルの一部を入力すればよい。著者検索の場合は「au:」、発行年は「da:」といった具合だ。

頻繁にアクセスするものにはフラグをつけておくと簡単に見つけることができるのでこれも有効に利用したい。ただし多くの論文にフラグをつけるとかえって見つけにくくなるので、これぞというものだけにとどめておくことをオススメする。

 

Papers Livfeによる研究者コミュニティの形成と論文紹介

Pepars livfeという機能がある。これはPapersを使っている世界中の研究者によるコミュニティを作ろうという試みである。私は使っておらず、この試みがどこまで成功しているかは分からないが、あまりうまくいっているようには思えない。しかしながら、もしも自身の周辺の研究者が全員Papersのユーザーなのであれば試してみても面白いかもしれない。

ちなみに現在一番人気のコミュニティはYoung Gunsと呼ばれるもので、そこではHow to Scientific Study的なTipsを紹介した文章が人気を博している。

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ノートとハイライト機能による論文メモ作成

私が気に入っている機能の一つがノートとハイライト機能である。Papersでは論文の文字列をハイライトしたり、論文中の任意の場所にメモを書き付けた付箋をはることができる。これらはブックマーク機能も有しており、ワンクリックでメモやハイライトをつけた場所に飛ぶことができる。
さらに論文内容のまとめなどが作りたければそれとは別のノートがあり、そこに文章を書きつけることもできる。

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高機能なファイル検索

またファイル内検索機能も非常に優れている。検索した語句をハイライト表示するのはもちろんのこと、その語句が何件あって、どのような文脈で用いられているかを一瞬で表示してくれるのである。右カラムを見れば分かるように、真ん中に検索語句があり、その前後がどのような文章になっているかが表示されている。しかもこれらをクリックすればそこにジャンプするというおまけつき。これは非常に重宝している。
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Magic Manuscriptsによる引用リストの作成

そしてこれに触れずしてPapersの紹介を終えることはできないと思うのが、Magic Manuscriptsだ。まさに魔法のように参考文献を必要な箇所に挿入し、文末にそのリストを自動で作ってくれる凄い機能である。

WordでもPagesでも文章を書いている最中に、参考文献を挿入したい箇所にカーソルを合わせ、ショートカットキー(私の場合はCtrl+M。変更可能。)を押して現れる検索窓に論文の必要事項を入力する。すると候補としていくつかの論文が表示されるのでその中で目当てのものをクリックして、Insert citationをクリックする。全ての参考文献をこの調子で全て挿入できれば、もう一度ショートカットキーを押して、Format Manuscriptをクリックすれば文末に参考文献リストが自動的に生成されるのである。参考文献のフォーマットは非常に数が多いので、事前に自分に合ったものを見つけておく必要がある。

詳しい手順はチュートリアルの動画を見ていただきたい。Word版Pages版のそれぞれが用意されている。

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iOS版との同期

これに関してはやや不安定なところが散見されるため、利用に関しては自己責任でお願いしたい。同期した結果すべてのデータが消失したということも考えられるので、くれぐれも同期前にバックアップをとることを強くお勧めする。

 

詳しい手順はこちらに書いてある通りである。MacとiOSデバイスが同じWiFiネットワーク内にある状態で、両方ともでPapersを立ち上げると、Mac上の左カラムにiOSデバイスが表示される。それをクリックし、同期の設定をすれば双方で同期が可能になる。PDFファイルだけにとどまらず、コレクションの内容や、ノートやハイライトまで全てが同期されるのは本当に素晴らしいと思う。

ここで注意点としては、Mac上に100本以上の論文があり、それらを同期しようとするとかなりの高確率で途中で同期が止まってしまうということである。その場合にはもう一度設定し直して、同期をやり直す必要が生じる。幸いなことに途中までは同期が済んでいるので、途中から再開する形となる。そしてまた数十本同期したところで止まる。またやり直す。この繰り返しである。私は1500本ぐらいを同期したが、5回ぐらいは中断したように記憶している。

しかし手こずるのは最初の同期だけである。以降は差分のみを同期するために、時間は長くても数分で終わるだろう。双方向同期にしておけば、iPadでハイライトしたものがMacに反映されると同時に、Macに新たにインポートしたPDFがiPadでも読めるようになる。

私は今のところ同期で致命的なダメージをこうむったことはないが、もう少しスムーズに同期できてもいいなとは思う。開発側もこのことは重々承知のようで、今後のロードマップにも同期能力の向上を掲げている。

  

iOS版Papers

さて、次はiOS側である。ここでは私の使っているiPad版に限って話を進める。

はっきり言って、現時点では使いやすいとは言えない。ユーザーインターフェイスが貧弱で、大量の論文を一覧するような表示機能がないのである。Mac版は非常にインターフェイスが洗練されているため、コレクションやフラグを使わなくても大量の論文の中から目当てのものを探し出すのは難しくない。しかしiPadではそうはいかない。タイトル、著者名、雑誌名で検索できるのがせめてもの救いだが、すぐに読みたいものはフラグをつけるなり、コレクションを有効活用するなりして、うまく目立たせないと大量の論文のなかに埋まってしまうだろう。

そしてさらにiPad版の残念な点は、スキャンしてOCRをかけたものにハイライトが使えないことである。つまり文字列として認識されていないのだ。最初はOCRの不具合とも思ったが、他のアプリでは問題なく文字列として選択できるし、Mac版でも文字列として選択可能で、そこをハイライトにすることもできる。おそらくアップデートで対応してくれると信じているが、現時点ではかなり残念な印象が拭えない。

しかしながら、1000本を超えるような論文を扱っていても落ちることがなく、いつでもどこでも論文が読めるようになったという意味ではiPad版の功績も評価すべきだと考えており、現時点でも不満を感じつつも使っているのである。したがって、論文を読むのもMacで充分だという人がこのiOS版Papersを使うメリットは一切ないと言える。私はMacでも読めるが、どちらかと言えばiPadの方が読みやすいのでこれを使っている。

 

まとめ 長所と短所

Papersの素晴らしい点

  • 美しいインターフェイス
  • 軽い動作で一瞬でプレビュー可能
  • 強力な検索機能
  • 便利なハイライトとメモ機能
  • 魔法のように参考文献リストを作成できるMagic Manuscripts

 

もう少し頑張って欲しい点

  • 馬鹿ではないが優秀とは言えないMatchによる文献情報入力機能
  • 不安定なiOSとの同期
  • iOS版の使いにくさ

 

最近はWindows版も出たようなので、興味があれば使ってみてはいかがだろうか。

論文をより深く読むための5つのTips 009

昨日のエントリでだいたいの論文の読み方は紹介した。今日はそれに補足するような形で論文の読み方に関する5つのTipsを紹介したい。やや上級者向けかもしれない。

 

論文をより深く読むための5つのTips 

  • 自分ならどうするかを常に意識する。
  • 査読者がどのようなコメントをしたのかを考える。
  • 自分の言葉でメモを取る。
  • 論文の思想的背景を見抜く。
  • 図解して論理構造をチェックする。

 

以下、それぞれの項目について説明する。 

 

自分ならどうするかを常に意識する。

論文を読んでいる際に自分がこの論文の著者ならどのように書くかを考える。著者の目的を達成するためにはどのような資料操作をすべきか、特定の資料を扱うときにはどのような目的を考えるべきかなど、目的や資料や方法や考察の箇所を自分なりに再構成してみるのである。これはすぐれた思考実験である。この作業を通して論文を批判的に検討する癖がつくだけでなく、自分の論文執筆の際の引き出しを増やすことにもつながるであろう。


余談だが、私の尊敬する研究者が「論文を読んでいて一番興奮することは、著者さえもが気づいていない重要なポイントに気づいて、ここをこのように分析すればもっとこんなことが分かるのに!と考えること」だと言っていた。さすが第一線で活躍する研究者は、他人の研究をみるときもいかに自分の研究に引きつけるかを考えているのかと舌を巻いたのを憶えている。

 

査読者がどのようなコメントをしたのかを考える。

基本的に我々が目にする論文のほとんどは同業研究者による査読が入っている。つまりプロの目のチェックの結果、OKが出たものだけが日の目を見ることになる(収録媒体によっては査読システムがろくに機能していなかったりする場合はある)。したがって明らかに論文として問題のある箇所や論理の弱い箇所は、差読者によってすでに指摘されており、修正が加わっている可能性が高い。


そのような箇所を見抜くことができれば、この論文に本来どのような問題があり、それに対してどのようなディフェンスを講じたのかを理解できるようになる。論文のディフェンス箇所を把握することができればその効力を評価したり、そのような方策を参考にすることができるようになるだろう。

 

自分の言葉でメモを取る。

論文をたくさん読んでくると、前に読んだものの記憶が薄れてくる。これは仕方のないことだ。しかし読んだそばから忘れてしまうと読んだ意味がない。したがって何らかの形でメモを取ることが必要になってくる。論文ノートを作成してもいいのだが、いかんせん時間がかかりすぎてしまう。


なので読んだ内容についてのメモを一行でもいいので、自分の言葉で書くことをお勧めする。自分の言葉で書いたものは記憶に残りやすいものだ。メモを書く場所はPCでも論文の余白でもどこでもいいと思う。

 

論文の思想的背景を見抜く。

参考文献リストには載っていないが、その研究者の考え方に大きな影響を与えた文献というものが存在する。


例えば現在50代以上で歴史学が専門の研究者なら多かれ少なかれマルクス主義の影響を受けている可能性が高い。その場合、マルクス主義がどのようなものであるかを理解していれば、著者がどのような世界を論文の中に構築しようとしているのかが非常に分かりやすくなる。また文章には直接現れては来ない想いのようなものを、行間から汲み取ることも可能となる。そうなれば論文や研究者の考え方をより深く理解できるようになるだろう。

 

図解して論理構造をチェックする。

良い論文には無駄な箇所などない。全ての節には意味があり、その節を成り立たせるために欠かせない段落の構成があり、それらの段落を支えるための文章が紡がれている。これらの論文の構成要素(文章ー段落ー節)はすべて著者の主張を効果的に読者に伝えるために存在している。そこに矛盾やモレやヌケは本来ないはずである。従って論文を読み、著者の主張を理解すれば、どのような根拠をもってそのような主張をしているかが分かるはずである。このような論理構造のチェックには図解作業を挟むことを推奨したい。論文の構成要素を図解して捉えることで、論理構造の問題に気づくことができる。良い論文というのは得てして論理構造が明瞭なはずである。

 


私が論文を読む時に気をつけていることを5つのTipsという形で紹介した。学部生はここまでする必要はないかもしれないが、こういう点を意識しているとまた違った論文の読み方ができるようになると思う。

論文の読み方(後編) 008

数ある論文をどう読むべきか

学生や研究者が読むべき論文の数は膨大である。それらに全て目を通すことは不可能だし、またそのような愚行はやるべきではないだろう。

ここでは論文の読み方のコツのようなものを紹介したい。私なりの方法でしかないので、分野や環境が違えば、有効な方法はまた違ってくるかもしれないが、それはまた別の話。

 

結論としては、端的に言えば、「緩急をつけて論文を読む」ということになる。
以下、詳しく解説する。(英語論文であることを念頭において解説する)

 

ステージ1:概要だけ知れば十分な場合

→「フィルタリング」

非常に数の多い論文を全部読んでいる時間はない。したがって適切な形でフィルタリングすることが必要になってくる。その際の第一フィルタリングとして機能するのがこの読み方である。非常に簡単。タイトルと要旨を流し読みして終了である。

 

ではその手順を少し具体的にみてみよう。

  1. タイトルを読む。
  2. 要旨を読む。
    1. 途中で読み飛ばしても可。
    2. 要旨はイントロ → 問題設定 → 資料の説明 → 分析の手順 → 分かったこと → その意味や展望というケースが多い。
    3. したがって余裕や興味があれば全部読めば良いしが、何を使って何が分かったのかだけ把握すればOK。
  3. 図表をパッと見る。
    1. 面白そうなものがあればキャプションを簡単に読む。
  • 合計所要時間は1〜5分程度。間違ってもこの作業に5分以上かけてはいけない。読むべきものは他に多くあるのだから。
  • 目指す理解度としては、この論文の内容を十数秒かけて他人に紹介できれば充分だろう。

 

ステージ2:内容に興味を持った場合

→「費用対効果リーディング」

ステージ1の読みを終えて、もう少し詳しく知る必要があると感じたものはステージ2へと進む。ここでは自分の課題や興味にしたがって、それに必要な部分だけ抜き出して理解することが目標となる。必要な部分が多い場合には時間が掛かるのは仕方ないとしても、ダラダラと読んでいくのは避けたい。

 

  1. 自分がその論文の何に興味を持ったのかを明確に意識する。
  2. その部分だけ(背景、問題設定、資料、方法、結果、考察、展望のいずれか)を読む。
    1. 内容に目を引くポイントがあれば線を引くなり、メモを取るなりする。
    2. 余裕があれば全ての段落の最初と最後の文章を簡単に眺める。これら文章はその段落にトピックセンテンスである可能性が高く、読み込みにおける費用対効果が高い文章と言える。
  3. 図表を見る。
    1. 図表につけられているキャプションを読んで簡単に理解する。
  • 目標所要時間は内容や個々人の課題によって変わるが、おおよそ30分から90分ぐらいが目安となる。
  • 目指すべき理解度としては、論文の内容を数分で簡単に他人に説明して簡単な質問に答えられればOKだろう。
 

ステージ3:入念に読みこむ場合

→「充分な理解と位置付け」

ゼミ発表における主要文献や、自身の論文執筆において核となる論文はこの方法で読み込む。論文全体を的確に理解・評価する必要があるため、読み込みにかける時間や労力はこれまでの比でなくなる。したがってステージ3まで来させるものは本当に必要なものだけにとどめる必要がある。そして肝心なのは、ここでは論文の内容を適切に理解するだけでなく、いかにその論文を位置づけるのかという点が非常に重要ということである。

 

  1. まずは各段落における著者の主張を把握する。
    1. 英文ではパラグラフ・ライティングが推奨されており、パラグラフを構成単位とした構造が理解できるかどうかが読解の鍵となる。
    2. 各段落の最初と最後の文章をちゃんと理解し、段落中の文章についても目を通す。この際全てを訳する必要はない。その段落の主張を自分の言葉でパラフレーズできれば十分である。
    3. 数字などのデータは重要なものはメモしておく。重要でないものはおよそこの辺りに書いてあったなという認識で良い。必要になればまたそこをみれば良いのだ。
  2. 各段落の主張を並べてみて、それらがいかに各節の主張につながっているかを把握する。
    1. それぞれの段落や節が有機的につながっていて、結論を確かに支えているかを確認する。
    2. 飛躍している部分や綱渡りのような乏しい論理に拠っている箇所はちゃんと見抜く必要がある。
    3. 著者の目的と方法と資料は密接に連関しているか、そこから導かれた結論は妥当かを評価する。
  3. 図表の内容と意味を理解する。
    1. 図表は著者がわざわざ貴重なスペースを割いて載せる必要があると考えたものなので、キャプションは完全に理解し、他人にその図表が指している内容とその意味を説明できるようにする。
  4. 関連研究をチェックする。
    1. 論文内で重要な位置を与えられている関連研究は参考文献リストに載っているので、それらの論文に目を通しておく。
    2. 関連研究の用い方に恣意的な部分がないかをチェックする。
    3. 著者のこれまでの研究動向を簡単でいいのでチェックする。
  5. 質問と意見を考える。
    1. 自分ならその資料をどう分析するか、自分ならその目的ならどのような論文を書くかなどを考える。
    2. 著者の前提としている考え方や思想を見抜き、そこに潜む問題点を考える。
  6. 研究史上へ位置づける。
    1. 関連研究の流れのなかでこの論文をどのように位置づけるべきかを考える。
    2. テーマ性、方法論、資料など様々な評価軸のなかでこの論文をどのように評価するかを考える。
  7. なんらかの形でのアウトプット
    1. 論文を読んで考えたことは、時間とともに完全に忘却されてしまうので注意を要する。
    2. PC上でもメモ帳でも印刷した論文自体にでもどこでもいいので、何らかのメモ書きを残しておく。
    3. 論文ノートのようなもので体系的に整理できればなおよし(私もできていません)。
  • 所要時間は短いにこしたことはないが、本当に重要な論文であれば理解するに充分な時間を投じるべきだろう。分量にもよるが数時間から1日といったところか。
  • 理解度の目標は数十分かけてその論文を解説できること。その論文に書かれている用語は全て網羅しておさえる必要があるし、関連研究に対する質問にも答えられるべきだろう。

ステージ3に至っては個々人の研究スタンスや環境や考え方に関わってくる部分は多く、一概にこうしろみたいなものは言えない。論文を100本を読めば自分なりの読み方のようなものが固まってくるとだろうから、個々人に様々な読み方があって良いと思う。

 

大切なのは3つの読み方の使い分け

以上、論文を「緩急をつけて読む」ということを紹介した。そこで重要なのは、本当に読むべきものを見分けるフィルタリングと、短時間で最大限の理解を引き出す費用対効果を意識した姿勢と、論文内容の理解を前提とした論文を位置づける試みなのである。このように読んでいくと、きっと学部生だろうが彼の頭脳やノートのなかには体系化された知が構築されていくことと思う。

 

人生は短い → やりたいことリストを作ろう。 007

自分のやりたいことを自覚できているか?

人生は短い。いろんなところで繰り返し耳にする言葉である。

後悔しないために自分のしたいことをしろ。これもスティーブ・ジョブズの演説などで触れられていることであり、誰もが知る言葉と言えるかもしれない。

 

ではしたいこととは何か。もちろんそれは人によって異なる。そして自分のしたいことに自覚的でない人は、当然ながら自分のしたいことができない。なぜなら、何が自分のしたいことなのかが分からないからである。

 

やりたいことリストをつくる

ではそれらに自覚的であるためには何をするべきか。そこで登場するのがリストである。別に難しい話ではない。単純に自分のしたいことをリストアップして、それを繰り返し眺めて、チューンナップして、それらを達成するためにはどのようなアクションをすべきかを考える。それだけのことである。

 

リストをつくる必要性や効用は多くの本に書かれていることであるが、そのなかでも最近読んだ本に『ゆたかな人生が始まる シンプルリスト』というものがある。この本の中にはシンプルなリストを作ることでもっと自分の内面や人生と向き合おうということが書かれており、本書には様々なリストが登場する。

ささやかな楽しみリスト。笑いのリスト。手放すためのリスト。自分の考え方を知るためのリスト。かけがえのない瞬間リスト。などなど。

 

私の理解では、著者であるドミニック・ホーロー氏の主張はこうだ。

人は非常に様々なモノやヒトやコトに囲まれて生きている。漠然と生きているとそれらの本質を理解したり、充分に堪能したりできずに通り過ぎてしまい、ムダなことに労力や時間を使ってしまいかねない。そこでリストという定型にあらゆる物事を当てはめる。リスト化するということは言語化・具体化するということだ。自分のしたいことが言語化・具体化できればもう達成への道筋の半ばまで来たと言ってもよい。あとはそれを日頃から意識するだけだ。

 

わたしの現在のしたいことリスト 

ここで一例として私の現在の人生におけるしたいことリストを晒してみたい。なかには非常に難しいもの、幸運が必要なもの、バカバカしいものが多く含まれている。しかしそれでいいのだ。リストは現在約100項目あるが、増殖を続けている。これらを作っているときが非常にワクワクして本当に楽しい。なんだか笑顔になってしまう。

 

  • ウッドデッキのある家に住む
  • 二人用の自転車に乗る
  • 二人の子供の父親になる
  • オーダーメイドのジーンズをはく
  • オペラを恋人と観に行く
  • スターウォーズ6作を一気に観る
  • 地元のJリーグチームの試合を観に行く
  • ヨーロッパの1部リーグの試合を観に行く
  • ワールドカップの試合を観に行く
  • 愛する人と結婚する万里の長城を歩く
  • 虫料理を食べる
  • 日本を一周する
  • 世界を一周する
  • 屋久島の縄文杉に会いに行く
  • バルセロナのサグラダファミリアを見に行く
  • 解散ライブを聴きに行く
  • スカイダイビングに挑戦する
  • 本を執筆する
  • 友達を誘って登山に行く
  • モルディブでのんびりする
  • 髪をすごく伸ばして全部後ろで括る
  • ニューヨークに行って兄家族に会う
  • 川下りをする
  • 祖母が亡くなる前に会いに行って沢山話す
  • スペインのトマト祭りに参加する
  • バンジージャンプをする
  • 自分の家族写真を撮る
  • トルコ語で書かれた本を読破する
  • 日本百名山を制覇する
  • ボウリングで200以上のスコアを出す
  • オリンピックを観に行く
  • シルクドソレイユを観に行く
  • 47都道府県の県庁所在地で写真を撮る
  • 自宅にホームシアターの設備を揃える
  • 映画を1000本観る
  • ジェットスキーに挑戦する
  • 動物園に行って、動物の絵を描く
  • 子供の髪を切ってあげる
  • ビール工場見学に行く
  • エジプトのピラミッドを見に行く
  • 能を観に行く
  • 歌舞伎を観に行く
  • 狂言を観に行く
  • 相撲を観に行く
  • 出産に立ち会う
  • サプライジングかつクールで記憶に残るようなプロポーズをする
  • サプライズパーティを仕掛けてもらう
  • 愛する人に本を読み聞かせる
  • 日常的に使うものを自分の手で作る
  • イチゴ狩りに行く
  • 店で貸し切りパーティをする
  • オーケストラを聴きに行く
  • 男だらけの飲み会を開催する
  • 牧場で乳搾りをする
  • 屋上のビアガーデンに行く
  • 蕎麦をうつ
  • 朝、日の出を見るための散歩に出かける
  • 大食いに挑戦し、勝利する
  • 競馬の予想を当てる
  • 梅酒を自分で作る
  • 利き水、利き酒、利き茶をする
  • トルコの世界遺産を全部行く
  • 日本の世界遺産を全部行く
  • バナナマンのライブを観に行く
  • ウユニ塩湖に行く
  • マラソンを完走する
  • ロンドンでフィッシュ&チップスを食べる
  • パラグライダーをする
  • 大物を釣り上げる
  • 寺で座禅をする
  • 最高の写真を撮り、家の壁に飾る
  • 結婚式でスピーチする
  • 腹筋を6つに割る
  • お遍路さんに行く
  • 最高のソファはどうしても手に入れたい
  • ドリアンを食べる
  • 長く海外にいた人を空港へ迎えに行く
  • ケーキバイキングに行く
  • 最高級の素材を揃えてフレンチトーストを作る
  • 映画に出演する
  • 姜尚中氏に会う
  • 気持ちよく晴れた日に芝生に寝転んで本を読む
  • スキューバダイビングに挑戦する
  • 10人とそれぞれサシで飲む
  • 50m走で7秒を切る
  • 自分のお気に入りのコーヒーとお茶を見つける
  • 自分に合ったサングラスを入手する
  • 最高のスポットで初日の出を眺める
  • 黒人の友達をつくる
  • ゲイの友達をつくる
  • 他人の命を救う
  • 観葉植物を家に置く
  • おいしいわき水を汲みに行く
  • その水で煎れたお茶を飲む
  • 完全なる脇汗対策を考案する
  • 自転車ダウンヒルに挑戦する

 

リスト作りは本当にオススメ

この中で現在のところ達成できるているのはわずか2項目だけである。

しかしこれから私は度々このリストを眺め、一つずつ達成した項目を増やしていくだろう。想像するだけで上機嫌になってしまう。

人生は短い。このようなリストは、その人生を単調でありきたりで不機嫌なものにすることから救ってくれるように思う。 頭の中にある形になっていない漠然とした思いを、リストという形で書き出してみる。そのことによって改めて自分がどのようなコトを望んでいる人間なのかを再発見できるだろう。これはなかなか楽しい行為だと私は考える。

論文の読み方(前編) 006

論文をいかに読むべきか、という大きな問題

さて、論文を読む際に考慮すべき問題、なにを読むべきか、いかに見つけるか、いかに手に入れるかについてこれまで書いてきた。

ここではようやくいかに読むべきかと言う問題に触れたいと思う。やや大きな問題であるため、前後編の2回に分けて書くことにする。

 

いかに読むべきか? → その著作に求めるものは何か?

現在世界で発行されている論文の数は夥しいものである。少し古い2000年のデータでは約58万本の論文が雑誌に掲載されているという。これらを全て一人の人間が読むことはおろか、目を通すことすら不可能であろう。自分の研究分野を小さく絞ったところで、本気で集め出すと非常に多くの論文が集まることだろう。

場合によっては数百本にもなるこれらの文献を全部精読していたらいくら時間があっても足りない。これは比較的真面目な学生がよくはまる落とし穴のひとつである。彼らはどこでそのような教育を受けたのか、文章というものは最初の文字から最後の文字まで、全て同じような注意力をもって読まなければならないと信じていることが多い。このような考え方は小説を読む時ならまだしも、学術論文を読む時にははっきり言って全く役に立たない。

その理由は3つ。①学術論文は非常に数が多く、一つひとつ丹念に全てを読んでいる時間はない。②学術論文といってもその内容は千差万別であり、自分には分からないものや面白くないものを苦労して読む必要はない。③自分が必要と思える情報さえ回収できればあとはおまけのようなものであり、丹念に読む必要はない。

とくに3番目の理由について解説しよう。論文はいくつかのパーツで構成されている。一般的なものであれば、

  • 題名 title
  • 要旨 abstract
  • 導入 introduction
  • 方法 method
  • 資料 material
  • 分析 analysis
  • 結果 result
  • 考察 discussion
  • 結論 conclusion
  • 謝辞 acknowledgments
  • 参考文献 reference

という具合である。

これらの大部分を丹念に読む必要があるものは、私の経験では感覚的に言って100本中1本程度である。

100本中99本は要旨だけ読むもの、要旨のほかに方法と分析と結果と考察だけを眺めるものなど様々である。なぜか。

 

論文を解剖し、それぞれの要素に分解する

それはその著作に求めるものが自分の中で明確に定まっているからである。論文の内容を知りたいのであれば要旨を読めば事足りるし、問題設定の意義や背景説明を知りたいのあれば導入を読めば良い、という具合である。

内容の全てが自分にとって必要かつ有益で、その全てが自分にとって未知のものということはまずあり得ない。ゆえに全てを丹念に読む必要などほとんどないのである。自分にとってよく見知ったテーマなのであれば導入は基本的に10秒ぐらいで読み飛ばして良いだろう。ちゃんと勉強している人にとってあまり目新しいことは書いてないはずである。むしろ目的と資料と方法と結論の妥当性をチェックすることに時間を割くべきである。

必要となってくる能力は、タイトルと要旨を短時間で読んで、その論文の一番のストロングポイントを把握することである。これができればその論文が研究史上でどのような位置付けを占めるのかが自分なりに理解できるようになる。読む際はどの部分が他の研究に因っていて、どの部分がオリジナルなのか、他の研究との関連はどうなっているかなどをチェックすればよい。

よく使われる言い方を用いるならば、問題意識をもって取り組むということになる。それはすなわち自分なりの読み方をするということである。さらに言い換えれば、それは自分の手持ちの知識や経験と照らし合わせて論文を評価するということである。そういう作業を通して始めて、その論文は自分の中で意味をもって使えるようになる。逆に言えばそういう風に読めないと、論文に書いてあることをそのまま受け取ってなるほどで終わってしまう。それでは薄っぺらいのである。時間の無駄である。

自分がどのような情報を得たくてその著作に当たっているのかを意識することによって無駄を極力省くことができるようになる。そうすればより多くの論文に接することができるようなり、問題に対して多角的に理解ができるようになる。資料と方法の新たな組み合わせを思いつくようにもなる。

こうして研究はまわっていくのだ。論文に「読破」という表現はフィットしない。論文は読み散らかして、そしてうまく利用してナンボなのである。

さて、次回は具体的にどのように読んでいくのかということについて紹介したい。

ヘッドホンQuietComfort 15という名の奇跡 005

ときには息抜きということで、今日は普段使っているアイテムを紹介したいと思う。

第一段は私の大のお気に入りのヘッドホン、BOSE QuietComfort 15である。これは今年私が購入したアイテムの中で最も買って良かったと思えるものである。

いくつかお気に入りのポイントを紹介しよう。

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ノイズキャンセリングの力、恐るべし

私は他のノイズキャンセリングヘッドホンをほとんど使ったことがないため、このQuietComfort 15におけるノイズキャンセリングを相対的に評価することができない。しかしながら、この機能、素晴らしいの一言である。本当に地下鉄だろうが飛行機の中だろうが音量を上げることなく普通に音楽を楽しむことができる。

また集中して執筆したいときなどにはノイズキャンセリングだけを使って、音楽を流さないという使い方もできる。この場合、周辺の環境は一切の無音と化す。キーボードを叩く音すら聞こえない。ちょっとしたトランス状態に簡単に陥ることができるため、やや注意が必要なぐらいである。しかし私は論文を書くときなど、このノイズキャンセリング機能にいつも助けられている。

別世界へと誘ってくれるほどの音質

ここまで高級なヘッドホンを使ったことがなかったのだが、これはもう他のリーズナブルな商品とは全く別次元と言える。音の一つひとつが非常にクリアに聞こえる。これまで雑に演奏していたバンドが、すごく丁寧に演奏するようになった印象である。聞いていて、「こんな音入っていたのか」と思うこともしばしば。この世界に一回足を踏み入れてしまうともう元には戻れない。つくづく恐ろしい商品である。

私の耳のために作られたかのような装着感

イヤホンやヘッドホンで私がかなり気にするポイントの一つは装着感である。長くかけていると痛くなってくるものが既存の商品には結構多いように思っている。おそらく耳におかしな形で一定の負荷が掛かり続けるのがその原因なのであろう。

その点QuietComfort 15はすっぽり耳を覆うタイプのものであり、直接耳にヘッドホンが当たらない(公式サイトによれば、アラウンドイヤータイプと呼ぶらしい)。かなり微妙かつ絶妙な距離と位置関係を保ちつつ、良質な音楽を届けてくれるのである。実際休日は6時間を超えて装着していることもままあるが、耳に痛みや違和感を感じたことは一度もない。

主張しすぎない、しかし使いやすいリモコン

リモコンにはボタンが3個ついていて、再生/停止、早送り/巻き戻し、ボリュームの上げ下げができる。私はこのヘッドホンをMac、iPad、iPhoneのいずれかに接続して使用している。Macで使用している際にはボリュームはキーボードで簡単にできるのでほとんどリモコンは使わないが、モバイル機器の場合は音楽を聞いているときにわざわざボリュームボタンまで手を伸ばすのが億劫である。そういう時にこのリモコンがあって良かったと思う。

単4電池で駆動可能という足回りの良さ

ほかの商品では特製のバッテリーがあったりするのだが、QuietComfort 15は単4電池1本で動く。最近はエネループなどの充電池があるため、かなり気軽に使うことができる。最悪旅行先で電池がなくなったとしてもコンビニに行けば簡単に手に入るだろう。この気軽さも購入を決めた一つの要因である。

 

だがあえて言おう、不満な点を

不満な点は少ないながら、ゼロではない。

一つ目は価格である。高い。高すぎる。3万円を越える。この価格に尻込みしてしまう人も多いだろう。私もずいぶん悩んだ。結果として買ってよかったと思っているが、もう少しお値段を勉強していただければという思いはある。

二つ目は電池がないと全く動かない点である。電池が切れるとノイズキャンセリングはもちろんのこと、音が聞こえなくなる。これは困りものである。しかも突然切れる。私は常に予備の電池を用意しているので、まだ危機的状況に遭遇したことはないが、長距離移動の際などに電池が切れたらと思うと戦慄を覚える。せめて電池がきれても普通のヘッドホンとしては使えるようになれば良いと思うのだが、そういうのは技術的に難しいのだろうか。私には分かりかねる。

三つ目はコードが長すぎる点である。手元に測るものがないが、およそ1.2-1.5mほどあるように思う。私の場合、部屋の中央にMacを置けば、部屋のどこにいてもMacに接続したヘッドホンを利用できるほどである(少し大げさかもしれない)。公式サイトではさらに延長コードを販売しているようだが、私のユースケースではもっと短いものが欲しい。Macに接続しているときはともかくとして、モバイル機器に接続するにはこれでは長すぎる。別売りでもいいので50cm程度のものを販売して欲しいと思う。

四つ目はちゃんとしたテストを行っていないのでなんとも言えないのだが、マイクが高性能すぎる点である。例えばカフェで友人とこのヘッドホンのマイクを使って電話をしたとする。するとほぼ100%の確率で「周りがうるさすぎる」と言われる。辺りを見回しても、とくにうるさすぎるという感じは私にはしない。通常の賑やかさである。つまり、このマイクが周辺の音をかなり拾っているらしいのである。今のところはマイクの音量を下げたりして対応している。これについてはもう少しちゃんと観察と検証をしてみる必要があるかもしれない。

 

悩むぐらいなら買ってみよう

不満な点はあるものの、私の感想としては最高の商品である。音楽を愛する人、日常の雑音から逃れたい人、思索に耽りたい人、そんな人達ならこのQuietComfort 15の良さがきっと分かるはずだと思う。とくにこれまでイヤホンには3000円以上出したことなかった私のような人間にとって、これは別世界への切符とでも言えるものである。

買うかどうか悩んでいる人がいるなら、是非店舗に足を運んで試聴してみてほしい。そこにはきっと新たな体験が待っているだろうから。

(BOSEから何か金銭の授受のようなものはありませんのであしからず。単純に個人の感想です。)

文献の手に入れ方 004

さて、目当ての論文を確認すると、次はそれを手に入れる必要がある。そのためには必要な方法がいくつかあるので、それを紹介したい。

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まずは大学図書館で蔵書検索 

まず大学生が向かうべきは、自身の通っている大学の図書館である。最近は外部からもインターネットで蔵書検索ができるようになったので、自分のPCから該当のHPにアクセスして検索してみることをお勧めする。このときのポイントは書名で検索することだ。大学図書館HPでは論文名から該当のものを見つけるのは多くの場合で困難と言える。また単行本の場合は著者名で検索することももちろん可能だが、その場合も同姓同名の著者がいたりするとやや面倒なので、常に書名で検索したほうがよい。したがって、見つけようと思っている論文は、論題はもちろんのこと、それが収録されている書名は絶対に把握しておく必要がある。

単行本であれ、論文が収録された雑誌であれ、目当てのものが自身の大学図書館で見つかれば話は簡単だ。それを図書館内で見つけ(閉架の場合は司書の人に出してもらい)、コピーを取ったり読んだりすればよい。

問題は大学図書館で見つからなかった場合である。

 

周りの人と司書に協力してもらう

その場合、まずは周りでその論文を持っていそうな人に訊いてみるのが手っ取り早い。先生や先輩はその論文をもっていれば、きっと快く貸してくれるだろう。

さて、では自身の大学図書館になくて、周りの人も持っていない論文をどのように見つければ良いだろうか。その場合まず問題となるのは、日本国内の他の図書館にあるのか、もしくは海外にしかないのかである。

日本国内の図書館にある場合は司書の人に頼んで原本かコピーを取り寄せてもらうことになる。時と場合によるが、国内なら1〜2週間程度で手に入るだろう。料金は500〜2000円といったところか。

またどの大学の図書館にあるのかが分かっている場合、そこに通っている友人にコピーを取ってもらってそれを郵送してもらうということもできるだろう。この場合はより早く入手できるかもしれない。

 

日本国内にない場合は覚悟と時間とお金が必要

日本国内にない場合はどうするべきか。この場合はややお金か時間、もしくはその両方が必要になってくる。図書館の司書の人に頼めば海外への手配も行ってくれる。しかしながらこの方法は論文一本でも3000円近くする場合があり、あんまり多くを頼みづらいのが欠点と言える。ここぞという論文が手に入らない場合だけにとどめておきたい。

 

どうしても手に入らない単行本や論文集があるならいっそのことAmazonで買ってしまうのも手だ。海外から本を借りるよりも安い場合すらある。

 

最終手段は著者に直接アクセス 

そしてここにあげた方法でも手に入らないものはもう著者に頼んで送ってもらおう。幸い近年は論文などに研究者のメールアドレスが書かれていることが多く、一般の学生でもコンタクトをとることができる。礼儀をつくして、必要経費などをきちんと支払えば、きっと著者も悪い気はしないだろう。そこまで自分の書いたものを読みたいと思ってくれている人がいるということは、著者にとっては嬉しいことであろう。

 

次回は論文の読み方を書こうと思う。